Water Park (Bank Protection)
Location : Yasuda, Kisa-cho, Miyoshi-shi, Hiroshima
Total area : Approximately 7,500㎡
Completion : 2000
敷地はダムエリア内の遊水池であり、貯水可能容量を変更できないとい規定があった。したがって既存の土量の変更=残土を残す工事はできないという規定があった。
よって、ここでの計画も敷地を平面としてではなく、文字通り厚みを持ち容積を持った量塊として扱わなければならない。
まず既存レベル(250.6m)をそのまま残す箇所を規定する平面図を作成する。これをテンプレート─基本平面として敷地に投影し、その周縁のみを掘削し、その残土を、そのまま築山として基本水平面上に被せる。建築に当たる部分はあくまでも、このテンプレート状の平面でしかなく、実際の操作は与えられた量塊から彫刻を掘り出す作業にはるかに近い。
ボリューム概念図
テンプレートは正円と楕円2つのリング状の舞台─島が連結されたものである。正円の島はこの谷に内接する円(半径120m)と共通の中心を持ち、楕円状の島はこの谷を上下川が自然状態で放流したとき、取るだろう流れの軸線に沿っている(その流れに舳先を向ける船のように)。つまり2つの島は周囲の景観とそれぞれ異なる幾何学的関係を形成し、ゆえに2つの島は同一平面にありながら、位相が異なるもののように現れる。
いわば彼岸と此岸、2つの世界の連結が、この2つの舞台に縮約されている。
文徴明 聴泉図 Giorgione, Tempest
築山や野筋は伝統に従って、周囲の自然を写し、それと呼応するように図られている。植生はなるべく、雑草と呼ばれるような草も含んで、在来種を使うことを旨とし、住民たちの希望によって果実も多く植えられた。遊歩道として確保されたテンプレート平面の2つの舞台は、その周囲で時の推移とともに変化していく自然の可変性──侵食堆積し変貌していくだろう周囲の景観、繁茂する植生など──を、反映し構造化するための関数(パラメータ)として働く。
そもそもこの舞台の背景には墓地があり、そこに込められた過ぎさった時と新たに(楽園として)生まれ変っていこうとする土地との有機的な連関をつくりだすことこそ第一の課題だった。いつも変らず周囲に微笑む、ひとつの顔──無限の持続から切り取られたひとつの断面として、この舞台はいつも、そこにある。