日回り舞台は、高水敷の一部として灰塚ダムエリアの最南端、安田生活再建地と接する境界にある。ちょうど安田の里から流れてきた上下川は、この地点でほぼ直角に曲がって知和谷に向かう。かつて背後に山城が築かれていた事実からも証されるように、ここは地形的にもまさに要衝の位置にあたる。
平面図
具体的な敷地は、ダムエリアからこの地に移転されてきた墓地そして住宅地および新しい保育園の間に残された空き地だった。つまり相互の関連性もなく建てられたままになっていた、これらの新たな施設の間を有機的に結びつけることのできる要として、この空き地は位置していたともいえる。
ゆえにコミュニティと自然の要衝としての、この空き地のもつ働きの重要さから、子供たちも参加するワークショップが、4年がかりで幾度も重ねつづけられることになった。その最終案が、この近自然工法による親水公園である。長い間コミュニティを結びつけてきた祭、盆踊りをしていた、かつての広場を失った新しい集落のために、公園にはウッドデッキの舞台が二つ、それぞれ舞台装置ともなる中庭、築山をまんなかに抱えこみ、緩やかに蛇行する上下川沿いの谷間と山々の稜線を背景に、対岸を観客席に野外舞台としても機能するように設計されている。法的にいえば、この工事は護岸整備であり、公園ではない。治水事業では、河川区域という線引きに沿って、コンクリートの護岸によって水の流れを規定してしまう方法が一般的であるが、その境界線をあえて崩し、敷地側に入江を引き込む大胆な案がつくられ提案された。繰り返された協議ののち、最後に案は受け入れられ、その結果、敷地全体が谷に浮かぶ独立した島あるいは船─廻り舞台とも見立てられる公園が出現することになった。まさに周囲の自然環境と人々の暮らし(そして、さまざまな感覚)を結びつける、交感の劇場。
photo:Tohru Waki
photo:Tatsuhiko Nakagawa
photo:Tatsuhiko Nakagawa