Haizuka Earthworks Projects

なかつくに公園

高水敷公園
所在地:広島県庄原市総領町稲草
総面積:約125,000㎡
竣 工:2007年

稲草という、もともとの地名が示しているように、かつて、この地には豊かな水田が拡がっていた。田総川の上質の水は、その名(田総=たぶさ)どおりに、この地に豊穣な稲作をもたらした。灰塚ダムの建設により、この豊かで美しい水田風景は消え、貯水(遊水)池(=河川敷)と呼ばれる荒れ地に変換させられることになった。この敷地に対して、住民側からのオルタナティブな提案(有意義な利用計画を含めた)が、10年以上にもわたって岡崎を中心にしたワークショップを通して組み立てられ、粘り強く提案されつづけた。国土交通省および行政サイドとの交渉、調整を通して、改良を加えつづけたヴァージョンは膨大の数におよぶ。

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豊な水田が広がる稲草地区         初期案(自然工法イメージ)

その結果ついに、2004年には最終案が受け入れられ、2007年、なかつくに公園として実現することになった。明治時代に治水のために直線にされた田総川の流れは、本来の自然のままに湾曲した姿が、伏流として復活させられた。各所にワンドやほたるが生育する小川が設けられ、生物の豊かな棲息環境となるよう考慮されている。

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最終計画平面

エリア内の地形は、1〜5m(最大8m)の緩やかな高低差の、それぞれ傾斜方向が異なる平面=丘の重ね合わせとして構成されている。傾斜角度の異なる無数の平原が,あたかも大地に重なりあう落ち葉のように、歩行する人と共に見え隠れし、その都度、視野は組み替えられ景観の連続を変化させていく。

高低スタディ模型

こうして変化と広がりが与えられた公園内を彩るのは、20種のもみじや16種のどんぐり、15種の果樹、ナタネやハーブの草原である。ワンドは釣り人たちにとってだけでなく、野鳥たちにとって絶好の釣り場である(すでに多くの野鳥、渡り鳥がおとずれ楽園となっている)。この公園の中で、人々の営みも(他の生物たちと同じく)大きな自然のサイクルに組み込まれたひとつの部分である。この自然が織りなす豊かな襞、起伏の間に、住民みんなの願いでもあった、あの田総の田(タブサノタ)、稲田がついに甦ることとなったのである。

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施工直後

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施工直後

なかつくに公園という名称は、川の中州(なかつくに)こそが、中国(なかつくに)つまり国がはじまった中心、豊穣の源だったという故事に因んでつけられている。(英語に訳せばMiddle-earth、トルーキン『指輪物語』の舞台となった『なかつくに』である)。中国山地を流れる田総川の中州、稲が草のようにフサとあふれる、この地を環境づくりの出発点とする(ここが14年間つづけられたアースワークプロジェクトの源である)──こんな希望と誇りがこの名によって表されている。

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施工直後

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三日月舞台