2 二つの軸
Ewpの活動は以下の二つの軸をもっている。
Ⅰ 地域社会の疲弊を活性化させること。
Ⅰ−ⅰ 夏期学校、秋期学校などのワークショップおよび子供、成人向けのワークショップなどを継続して行い、地域環境全体をフィールドにした環境学習、芸術家養成の学校を作ること。
Ⅰ−ⅱ 芸術家が長期滞在するコロニーをつくり、交流住民を増やすこと。
Ⅱ 自然環境保全。建設省の計画をチェックし、自然環境を生かす、対抗提案を作成すること。
3 活動のさまざま
岡崎乾二郎は1993年より、灰塚アースワークプロジェクト(1994年発足)の主要メンバーとして夏期学校、小学生ワークショップ、環境学習などさまざまなワークショップ活動を行なってきた(Ⅰの軸)。
このワークショップと平行し、足掛け14年間、建設省(国土交通省)に対して提出された、岡崎が起案し、とりまとめた住民側からの提案、アイデアは、自然環境保全、景観形成(Ⅱ)、文化活動、イベントなど、さまざまなレベル、膨大な数に及ぶ(Ⅱの軸)。
計画の基本はサステイナブルな環境の実現だったが、自然の多産性、多様性は、文化的資源として積極的に意味づけない限り、視野から排除されてしまうという困難がある。たとえば農業を営んできた住民たちにとっては生活との有機的な連関がなければ、放置された自然は荒廃しているものと同じに映る。多産的であってもマイナスの意味しか与えられていない湿地を有意義な環境として認めるためには、だから、まず意味的な変換が必要となる。
こんな場面で、(芸術的!)な突飛なアイデアが有効となることもある。たとえば、お化けが発生するという言い伝えを生かす(気象条件により、一年に一度の確率で発生可能な火の玉発生装置、および発生予測機器を設置する。岡崎はこのための綿密な計画を作成している。)という一見、唐突なアイデアも発想の転換として、おおいに有効となった。お化けがでるという意味づけが積極的に与えられるだけで、自然はそのまま、手つかずの豊かな姿のまま残され、生かされうるのである。
こうしたコンセプチュアルなアイデアから始まり、最終的な実現にまで至ったプランをあげるだけでも、◎住民たちの投票をまとめたガードレールの環境色彩計画。◎こどもたちの絵から物語まで作り上げたキャラクターサイン計画。◎苔の人工的な育成などを含めたさまざまな緑化、ビオトープ計画。◎国土交通省が建設する橋梁が環境に与える影響、機能を変換する欄干システムの設計。◎護岸工事を自然公園へ転換する提案設計。◎ダムエリアの中にかつての豊かな田畑を自然公園として復活させる提案設計など多種多様である。
ガードレールの環境色彩計画
ワークショップ参加者たちと描いた絵を
地域のキャラクターとしてデザイン
それらは文字通り5cm四方の微細な苔の生育システムから、500haのランドスケープの環境設計に至るさまざまなスケール、レベルに渉り、そのすべては自然の多産性を、短期的な経済価値に還元できない文化的資源として位置づけなおすというコンセプトにおいて一貫している。(こうした地道な活動こそ、芸術が成立するための基礎条件であるという信念にもとづいている)。
2007年にダム工事は終了した。2000年には、岡崎が住民たちとともに立案設計した
日回り舞台(護岸公園)、2007年には
おととい橋、三日月舞台、
なかつくに公園が竣工している。環境生成(ジェネレイト)の作業、ワークショップなどのプロジェクトは持続している。
日回り舞台