炎は動きますが、やはり色も形ももっています。硫黄を燃せば眼のくるっとする紫の焔。銅を灼けば孔雀石のような青い火。アラムハラドは眼をつぶりました。暗闇がぼうっと燐の火のように青く、そこに黄金の葉をもった立派な木立が梢をさんさんさんと鳴らす。また眼をつぶりました。青い景色がまた見え、翅のように軽い黄金の着物を着た人が四人まっすぐ立っていました。林の木の葉がぱちぱち音をたてました、雨粒は見えません。(宮澤賢治「学者アラムハラドの見た着物」より)
2018│Acrylic, canvas│160×260×7cm Private Collection