比類なき高み、世界の背。音楽が目に見えるという発見。羊飼いの少年の笛から流れ出す泡立ちは地表の往来を下に見おろし、なお上昇を続ける。万年雪の中へ退こうとする僕の背中はもう薔薇の花に取り巻かれている、それが聴こえる。 この熱波のせいだろう。悠久の進化で敏感になった大脳にこの暑さが作用し、科学的にいえば肉体がこの世から溶け去った。肉体がふやけ、神経繊維だけを残した。それがベールのように大地全体を覆い広がっていくんだ、そうでしょう?
2023│アクリル、キャンバス│208 × 117 cm 個人蔵