夏の太陽が照ると、運河沿いでも日よけを下さなければならない。もともと動作はノロクサ、口は舌っ足らず、見てるだけでじれったく汗が噴きでる。蒼白く痩せた躯で、間が抜けたように眉毛と眼の間は離れ、顔つきはボウっとしている。
その日よけは、ゴシック様式の四つ葉飾りと唐草の葉飾りのがっちりした窓の間に張られていた。その窓の下で汗を流す男は日に焼けて全体にがっちり逞しく、顔つきも明るく、押しても突いても動かない重厚な力感にあふれていた。ギザギザの炎で縁どられた金色の卵のようなお日さまは一気に膜を突き破った。それは光の洪水です。心臓の鼓動が速くなる。こんな光景は何度も見たけれど、みな夢の中だった。私はまだ夢を見ているのだろうか。いや目は覚めている。
ここはどこだろう?私は絶望し盲人のようによろめき歩いた。家族はどこ?世界に何が起こったのか?風が吹きはじめ、風は唸り手を伸ばし椰子の木のてっぺんを吹きさらい根元から引き抜いた。雨が激しい音をたて洪水を引き起こした。