「手出しをするな。ということこそ、私たちにとって唯一の言葉である」ぐんぐん近づいてきたのよ。でもこなかった。音もしなかったし、まだ明るかった。そんなにあんまり呼ばないで。いま自分から行こうとしているのだから。なんであんなことを彼が言っていたのかわかったわ。然るにその日の午後になって、わたしたちの住んでいる住宅地のすぐ近くに、落ちたのです。ええ、私のしっている人は一人だけです。熱エネルギーの移動。これだけは自然のなりゆきにまかせるよりほかはない。いや、やはりそれは自然のしわざではない、化学者のしわざです。「手の下しようもなく、お行儀がいい。だからどうかわたしを日陰におかないで。」あんなことを、なんで彼がいっていたのか分かるでしょう?
1990-1991 鋼190×180×320cm
大阪中之島美術館