湖を巡っても湖がどこにあるのか気にも留めない、雨に濡れず雨の中で手紙を書き終える(背中がちょっと赤い)子犬。(黄金伝説より「聖ベルナルドゥス」)聖ベルナルドゥスは最小限の睡眠時間しかとらなかった。眠っている時間ほど無駄はない。眠りはひとつの死である(けれど神からすれば死人こそ眠っているだけかも知れない)。大きな鼾。だらしのない格好。ただ肉が眠っているだけである。だから食欲や悦びから食べることもなかった。彼は水ほどおいしいものはない、水を飲むと喉がさわやかになると言った。森や野に出て瞑想する。森のミズナラの木。ブナの木が彼の先生であった(ブナの葉は、また彼の唯一の食糧だった)。(黄金伝説より「聖ベルナルドゥス」)