岡﨑の企画アドバイスによる展覧会「断続する線:ユリエ・クニファーと菅井汲」が開催されています。
断続する線:ユリエ・クニファーと菅井汲
■会期:2025年4月10日―4月29日
■会場:Terrada Art Complex II BONDED GALLERY 4階
東京都品川区東品川1-32-8
■開館時間:12:00―18:00
■休館日:日、月(上記時間以外はアポイントメント制)
::詳細
https://www.galeriefrankelbaz.com/873/discontinuous-lines-julije-knifer-and-kumi-sugai
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Sugai and Knifer: Parallel Visions from the Periphery
岡﨑乾二郎
クロアチア(旧ユーゴスラビア)出身のユリエ・クニファー(1924-2004)と日本出身の菅井汲(1919-1996)。
二人はおそらく直接会ったことはなかったかもしれない。が確かに、彼らの作品は表面的な類似を超えた深い共通点を持っていると察知できる――その方法論と芸術的視点において。
この共通性は、彼らがともに同じ時期、パリに過ごし制作した、同じ政治と芸術文化が交差する空気を吸っていたことと無縁ではあるまい。
システムの袋小路(cul-de-sac)、建設途上の都市計画が途切れるところに現れる風景。瞬間にあらわれる、こうした偶発的形態こそが視覚を占拠し、記憶として持続する。
それをシステムへ対峙し抵抗する力として提示する。途絶えることなく持続する潜勢力――それが菅井のチューブそしてクニファーの屈曲するミアンダーだった。
であるならその切断面にあらわれる形態は、都市生活のルーティン化した風景に抵抗するバリケードとして現れる。
反都市、反建築、ここで反とは政治的行為そのものを指す。
芸術はこの行為すなわち政治的切断として現象する。
彼らの仕事は疑いなくポスト構造主義の思想を正確に反映していた。
ユリエ・クニファー(1924-2004)、菅井汲(1919-1996)。彼らの仕事を通して、1970年代以降のアメリカ大陸に表向きにあらわれたポストポップ、ポスト抽象(あるいはシミュレーショニズムとも呼ばれた)動向の本当の源泉がなんであったかも明らかになるだろう。彼らの実践は、アヴァンギャルドが常に地政学的・視覚的周縁から生成されてきたことを私たちに思い起こさせる。