盛り上がったような眼がしら、耳掻きの先くらいのふくらみが見える。痩せている手。それで碁石を置くときだって袖を指先まで掛け手元を隠すようにしていたのかしら。向かい合う人には見えないようにか、心して柴垣などをめぐらし、そんななかでも夏草は繁茂する。別段用事があったわけではないけれども徒然でもなし、ただそうされるものだから、ぽかんとそれをこちらから見ていた。
1994│アクリル、カンヴァス│180×210×8cm 作家蔵