不思議なことに、その人物が現れたら、その一瞬、この場所が実に淋しい場所に変ってしまった。樹々の枝の中に序々に薄れていくような日差し。彼はこちらを見て私だと判っただろう。けれど彼はそこにいるかも知れないしいないかも知れない。わたしには見えないのだから、たぶん彼はいないしわたしもいない。わたしはそう決める。彼は誰か他の人に会いに来ている!
1994│アクリル、顔料、カンヴァス│220×179.4×8cm 作家蔵