人慣れない若い女が、淋しい場所で見知らぬ男に出会ったとしたら、さぞかし怯える事もあるだろうが、もう顔なども、うすぼんやりとしか覚えてもいない人が、何かのはずみに心の奥の方からふっと浮きだして来ると、不思議と懐かしい人にも感じられる。残す気などさらさらなくとも、お互いにどこかに残したり、残されたりするのである。
1994│アクリル、顔料、カンヴァス│145×111.8×4.8cm 作家蔵