日がたち月は過ぎていくばかり。それでも人は歯をぼろぼろに磨り減らさなくたって生きてはいけた。悲しいけれども人生は望みがある。病でもないのに、こうもこんこん睡りこんでいると変った気配があれば、夜更けでも目覚めるともなく耳を澄ます習慣はついている。あるときは鳥の声。毛孔のたつような畏ろしい音も度々。頻りなく断絶したのは山の獣の叫び声であった。

啓蟄には、土の中の死んだ虫さえ蘇るという。笑うことによって人生の苦汁の荷の重みもほんのすこしは軽くはなるか。肘が、膝が、おもむろに埋もれていた感覚を醒まし、かえって全身のこわばった筋がひきつれを起こす。大気の変化は日々とはいわず半日のあいだでも目まぐるしく、宵にかけて驟雨がくりかえされ、園の青菜も濡れ土は黒ずみ、やがて瓦屋根にも音はやってくる。気がつくとまた昼間の夢を見ていた。

1997アクリル、カンヴァス180×116×5cm
作家蔵

日がたち月は過ぎていくばかり。それでも人は歯をぼろぼろに磨り減らさなくたって生きてはいけた。悲しいけれども人生は望みがある。病でもないのに、こうもこんこん睡りこんでいると変った気配があれば、夜更けでも目覚めるともなく耳を澄ます習慣はついている。あるときは鳥の声。毛孔のたつような畏ろしい音も度々。頻りなく断絶したのは山の獣の叫び声であった。

啓蟄には、土の中の死んだ虫さえ蘇るという。笑うことによって人生の苦汁の荷の重みもほんのすこしは軽くはなるか。肘が、膝が、おもむろに埋もれていた感覚を醒まし、かえって全身のこわばった筋がひきつれを起こす。大気の変化は日々とはいわず半日のあいだでも目まぐるしく、宵にかけて驟雨がくりかえされ、園の青菜も濡れ土は黒ずみ、やがて瓦屋根にも音はやってくる。気がつくとまた昼間の夢を見ていた。

1997アクリル、カンヴァス180×116×5cm
作家蔵