「火は高い場所へと向かい、水は低い場所へと流れる」。「だが、しかし」、強い腕で相手を掴み、がっきと組みあう二人の力士の姿は、空高く大工が風の力を防ぐよう組み合わす切り妻屋根の垂木のよう。もし彼らが馬であるなら彼らは動物であるが、彼らは馬でないから動物でもない。運動によって力を与えられれば水も揮発し、上に向かうのである。
「しばらくすれば下にあるものはひっくりかえって、上になるだろう」。「とはいえ」、互いの力でひどく引き締められ、みしみし鳴らされる二人の背中は、一定量の音にしか耐えられずに喘ぐ、楽器のよう。汗は滝のごとく流れ、赤く充血したみみず腫れがいくつとなく脇腹に浮き上がる。もし昼であるなら夜ではない。昼であるから鎧戸も閉じられる。
2005 アクリル、カンヴァス148×91×6cm(2段組)
作家蔵