あなたはこの水を乾かし、あるいは飲み干すだろう。けれど決して水は滅びない。水は姿を変え移動しただけである。水は乾くことなく、水がのどの渇きを癒すのだ。と似て、わたしの指一本いや手足を切り落とそうと、わたしは切り落せない。姿を変える勝手気ままが水ではなく、わたし(の赤い水、血)ではない。水の中に水の姿に関わらぬ何か、として水の霊が宿っている(水が弾きだす波と早合点しないように。波は音楽のようにあちこち拡がり増えたり減ったりするが、水の霊は増減せず分割もされない)。わたしは水の中にあり、泳ぎ、まどろみ、そして目覚める。宙空の箒/アウフヘーベン