それが通り抜けたのは一瞬でした。喇叭の音、みなが叫ぶ声、わたしの耳、そもそも天にある星星が驚いて手を叩き全身を震わせました。色がなければ眼に入らず音がなければ耳に入らない、空気に混じらなければ鼻も識ることはない。通る道はどこにもないはずでした。けれど誰も、自分の眼が今それを見ているそのもの自身に向かって、そのものが存在しないのではないかなどと尋ねることはできません。だから天使たちはお互いに尋ねました。賑やかな声と光で満ちていたのはそれが理由でした。光と言葉は「存在する、しない」と問うよりも先に世界に存在したのです。
2017 アクリル、カンヴァス210×260cm