たとえば熊手を持ってきて、そして、うるおい渡る青苔を剥がさぬように、堆い落花だけを掻き寄せ拾いあげるように、代わりにもしも狸か何かが来て、白毛まじりの髪も乱れかかっている母を喰い殺したりしても、若く美しかった母の姿が消えるなんて、考えることもできません。それが花ならば拾い競っても、二三日もたつと飽いてしまう筈だから。
1999│アクリル、カンヴァス│72.5×91×5.5cm 個人蔵