あら、先生、ずいぶんとお芝居じみていますこと。ご主人と奥さんは、日に焼けて真っ黒になるまで働くのに、お嬢さんふたりは庭に水をやる手伝いもしないで、遊び歩いているわ。彼女たちが、いかにして、誕生したのかというような解決もつかない無用な問題にかかずらわるなんて事は、役に立つことをしもせず、ぶらぶらしている人たちにまかせときましょうよ。
理屈はなんとでもつけられるもので、過程にあるものが結果と見えるのだ。つまりは事の成り行きかね。裏返しにいうと、夫婦ふたりの責任にもとれるが、ま、紙一重といったところだな。人の考えには永遠の回転運動が存する。対象がいかなるときに変化するのかという問題ではなくて、新しい経験にあちこち揺り動かされながら、人の心も姿を変えるというわけだ。
1997 アクリル、カンヴァス184×116.8×6cm(2段組)
個人蔵